それが、一週間前の話。

 気持ちを伝えるのが早すぎたのか……。

 だって部活が急に休みになったから、部員の誰かを誘ってどこかで練習しようかなーって思って廊下を歩いていたら、ひなたちゃんがひとりで教室にいたんだもん。クラスが別になってからは接点なくなっちゃったし、チャンスだ! って思ったのになあ。

 そんな話をしたら、同じバレー部の凪人が、冷めた顔してこう言った。

「むしろなんでオーケーされると思ったんだ? 見た目は良いのに、ヘタレで泣き虫で女々しくて気にしぃで鈍いくせに、あがり症ですぐ腹を壊す和泉が」

「凪人冷たい……。失恋した友だちを励ましなよ……」

「友だちじゃねーべ」

「ひどい! 小学生の頃から同じチームでバレーしてるのに!」

「だからこそでしょ」


 まあ、シチュエーションに気持ちが盛り上がっちゃったってのもある。

 クラスも部活も委員会も選択科目も違うと、なかなか会う機会がないし、絶好のチャンスだって思ったんだもん……。

「あ、ひなた」

「え、どこどこ!?」

 凪人が指差した先にいたのは、紛れもなくひなたちゃんだったけれど、そのひなたちゃんは……。
 おれが見たこともないような笑顔で、おれの知らない男と話す、ひなたちゃんだった。


「隣のやつ、なんだっけ、サッカー部の」

「……知らない」

 知らないけど、なんだかすごく嫌な気分になった。

 おれが振られたのは、おれとひなたちゃんの距離が思ったより近くなかったせい。
 だから、おれを振ったひなたちゃんがどこの誰と楽しく話そうが、ひなたちゃんの勝手だけど……。

 勝手なんだけど……。

 気付いたら勝手に。ほんとに勝手に。身体が動いていた。


 腕を掴むと、ひなたちゃんも、ひなたちゃんの隣のやつも驚いた顔でおれを見た。否、見上げた。ふたりよりおれのほうがずっと背が高い。

「い、和泉? どうしたの、その顔……」

 ひなたちゃんがそう言ったけれど、答えないまま掴んだ腕を引いた。