しばらく押しつけてそれを離すと「どうだった?」と自信ありげに質問してくる。

「どうも何も……」

「ちょっと! 岡本くんとわたしが上手くいくかは、隼人にかかってるんだからね!」

 そんなの知ったこっちゃねえ。

「ほら、隼人、もう一回しよう!」


 知ってるか、知花。
 俺はおまえと岡本が、駄目になっちまえばいいって思ってるんだぞ。

 昔から、勉強も家事も難なくこなしていたけれど、肝心な所はちょっと抜けている。そんな知花を放っておけなくて。まるで陶器でも扱うみたいに大事にしてきた。
 それを急に現れた岡本にあっけなくかっさらわれて、腹が立たないわけがない。噂では岡本は、高校に入ってから途切れることなく彼女がいるらしい。それが噂止まりなのは、彼女が全員他校生だからだという。

 そんなやつが、本当に知花を大事にしてやれるのか。することだけして、飽きたら捨てるかもしれない。

 大事な知花が壊されてしまうなら、俺が壊してしまえばいい。
 岡本が何かを仕出かす前に、知花の心を動かしてしまえばいい。


 押しつけられた唇を噛み、少しだけ開いた唇に舌を差し込みながら押し倒すと、知花は驚いた顔をした。

 このまま先に進んでしまえば、次はどんな顔をするだろうか。岡本とは終わるだろうか。俺のものになるだろうか……。








(了)