「あぁっ!? おまえら何全部食ってんだ!」
「急に飛び出して行くからいらないんだと思って」
「あ、陽菜先輩! うまかったっす!」
「ほんと、すごくおいしかったよ」
「陽菜料理うまいんだな!」
「陽菜はなんでも上手だよ。前に食べたオムライスとか肉じゃがもおいしかったし」
「ヒメ! おまえ陽菜の料理食ったことあんのかよ! なんで言わねえんだ!」
「聞かれなかったし、陽菜んち行くって誘ったのに、来なかったの光平くんだよ」
体育館。入り口の近くで重箱弁当を広げて、それを取り囲むようにみんながわいわいやっていた。
お弁当の中身は見事に空で、それでも足りずに食べ盛りの高校生たちは、持参したお弁当を食べている。
光平くんはヒメや小野田くんに掴みかかって抗議していたけれど、講義しても中身が復活するわけではない。
「いいじゃん、いつでも食べられるようになったんでしょ?」
矢本くんの言葉に、少し考え込んだ光平くんは、腹が立つくらいのドヤ顔で「まぁね!」と答えた。
答えてすぐにわたしのほうを向いて「作れよな」とストレートに言うから、わたしも「なんでも作るよ」と返事をした。
たまには素直になる日があってもいいと思った。
挑発癖のある男と、可愛げのない女の場合は、特に。ね。
(了)