光平くんのやつ、むかつく。ほんとむかつく……!

 昔っから嫌なことをにやにやしながら言うやつだった。
 そのたんびに嫌な思いをして、もうあんなやつと口きかない! と思うんだけど、そこは惚れた弱み。ずっと一緒にいた幼馴染みだし、次の日にはお互い忘れて、何もなかったかのように一緒にいた。

 だからまさか光平くんとの言い争いで、泣いてしまうなんて思わなかった。


 置いて帰ってしまった友だちからの「大丈夫?」メールに、大丈夫だよごめんねと返信して、ベッドに倒れ込む。

 好きな人に、女子力ないとか可愛くないとか料理が下手だとか、そういうことを言われるのはさすがにきつい。
 そりゃあ襟首だるんだるんの部屋着だし、寝相も悪いけれど……。料理はちゃんと作れるようになったもん。お父さんが単身赴任を機にお母さんも仕事に復帰して、家事はわたしの担当になったから、家のことはある程度できるもん。

 高校最後の大会が近いからってバレーばっかりして、わたしに興味がないのは分かるけどさあ……。わたしのこと知ろうともしないで馬鹿にしないでよ……。

 そのままカーテンも閉めず、布団も被らずに寝てしまったみたいで、夜明けとともに目が覚めた。

 時刻は朝四時半。
 むくりと起き上がると、途端に目が冴えてしまった。
 せっかくの土曜日なのに。老人かってくらい早起きしてしまった。

 ふ、と。光平くんのにやにや顔が浮かんだ。
 おまえにはそんくらいの料理スキルしかねえよ、って言葉も。

 まだ悔しい。まだむかつく。寝て起きてもまだ腹がたっているなんて初めてだった。

「……なんか作ろ」

 呟いて、ベッドからおりた。