そんなセクハラ男は、学校の人気者だ。

 スポーツも得意で勉強もできる。平和な雰囲気を纏っていて、いつでも笑顔。怒った顔なんて見せたことがない。真っ直ぐ目を見て話を聞き、飾らない態度で話してくれる。男子にも女子にも、年下にも年上にも、地味な人にも派手な人にも、分け隔てなく。ついでに顔は、その辺のアイドルグループに混じっていても遜色ないくらいだ。
 そんな完璧なひとが、モテないわけがなかった。

 そんなイケメンは相当なサボり魔で、今現在はわたしの下半身に向かって合掌しているセクハラ野郎なんだけれど……。それを知っているのは、なぜかわたしひとりだけだ。



「さてと。パンツも見たし、アイスおごってあげるよ」

「……」

「あれ、嬉しくないの?」

「あーはいはい嬉しいですありがとうございます放課後がたのしみー」

「心がこもってないなあ」


 ああ、どうしてわたしは朝比奈先輩と一緒にいるのだろう。こんなに目立つ先輩と……。

 こんなも、わたしが理想としていた「平凡」じゃない。平凡が欲しい。決して多くを望まない、四十点の生活が欲しい。

 ああ、でも、こうやって朝比奈先輩と日向ぼっこするのも、ある意味平凡なのかもしれない。少なくとも、五十年後は縁側でのんびり日向ぼっこをする平和で平凡な日常を望んでいる。それが五十年早くやってきただけなのかもしれない。