「陽菜、宅配便がきてるわよ」
『おかえり』もなくママが満面の笑みで小包を差し出す。
ママ、靴を脱ぐまで待ってよ。
「誰から?」
今日の靴はブーツなので時間がかかる。
「さぁ、誰でしょう?」
『ウフフ』なんて笑ってるし…ってことは!
「隼人お兄ちゃん?」
「はい、正解です」
急いでブーツを脱ぎ小包を受け取る。
『藤倉陽菜様』『尾崎隼人』
隼人お兄ちゃんからだ。
あ、これってもしかして
「一日早いホワイトデーね」
今日は3月13日、明日が14日でホワイトデー。
「隼人君、期日指定にしなかったのね」
「もしかしたら期日指定なんて知らないのかも」
いい意味で野球馬鹿なんだから。
「仕方ないわよ。今はオープン戦で忙しいんだから。忘れてなかっただけでもよしとしてあげなさい」
「うん、分かってる。あ、パパは?」
玄関にはパパの靴があるってことは帰ってるのよね。
お風呂にでも入ってるのかしら。
「フフフ…これを見てご機嫌損ねてるわよ」
「……」
どこまでヤキモチ妬きなんでしょう。
「二階に上がる前にパパに『ただいま』を言ってらっしゃい」
「うん」
嫌味の一つも言われるのを覚悟してリビングへ。
「パパ、ただいま」
「あぁ、おかえり」
ソファーに座って新聞を読んでたパパが顔を上げる。
「早く着替えてこい。腹が減った」
「あ、うん」
珍しいわね、何にも言わないなんて。
でも…後が怖いかも。
とにかくリビングを出て二階の自分の部屋へ。
バッグと小包を机に置く。
早く中身を見たいけどパパを待たせちゃまたご機嫌を損ねるわ。
我慢我慢。