永君に掴まれる腕を数回引き、反対の手で私たちを笑う人を指差す。



「あの悪趣味なヤツ、誰」



「アホ!俺の上司!」



「――何てッ!!?」



…悪趣味野郎(あの人)が!?

永君に拘束されてしまい、私は顔面蒼白で上司の人へと頭を下げる。

目に涙まで浮かべて笑いながら近付いて来た上司さんは、チャラ男(久我さん)を立たせて、私に頭を下げ返して来た。



「ごめんね。笑うつもりはなかったけど、桜澤は婦警たちにモテるのに、この顔で知らん顔。それなのに飛び出したと思えば、彼女さんの為に後輩に土下座させた。見てて面白くなったんだ」



…やっぱり悪趣味じゃない!

私は間違ってなかった!

部下の行動を笑うんじゃないよ!

チャラ男(あんたの部下)は、私を襲おうとしたんだよ?

オーバーかも知れないけど。



「悠李」



「何」



「俺の詰めてる交番の所長、堤-ツツミ-さん」



「どうも」



「怒らせてしまったかな;;」



「堤さん。今日、お伝えした相手が、この悠李です」



…“お伝えした相手”?

私、何かしたの?



「じゃあ、この人と結婚するのか!」



「はい」



「「「『えーーッ゛!!?』」」」



…何でそうなったの?

いつの間に??

私まで叫んじゃったじゃないっ!!