「永君だけじゃなくても、好きな人には自由で居て欲しい。ママが、パパが接待で女社長さんと呑みに行っても許したり、おばさんが“あのドクター格好いい”って言っても、笑って“俺の方がイケメンだ”って流せるおじさんのようにね」



「けど、永に保障は……」



「ないかも知れないよ?けど、永君の行動が、間違ってても、相手の気持ちに、一度だけでも答えようと頑張ってたなら、誰も責められないんじゃない?永君と、その相手にしかわからない話だけど、でも……片方が責めらて、引かれるのも、おかしいと思うよ」



「そんなに好きか」



「うん……好きかもね。おじさんたちも知らない永君の優しさを、私は知ってるし」



「…………?」



愛叶にすら結局言わなかったあの夜のキスを、おじさんにも言わず、思い返して微笑む。

永君の事だもん。

あんな優しいキスは、きっと誰にもしてない。

きっと、私にだけ。

私の笑みに、首を傾げるおじさん。

私は“何でもない”と言うように、手を振り、そして髪をかき上げ、たった一夜の幸せを思い出して胸を抱いた。



「悠李?;;」



永君は、あの夜をどんな風に覚えてるだろう。

ちょっとは良い思い出として、覚えててくれてるだろうか。