ザー 降り止まない雨の中、 大きなあじさいの側で 二つの黒いレース状の傘が、空を向いていた 「愛、もう行こう。風邪、引いちゃうよ」 「うん」 しばらくすると二つの傘はゆっくり動き出して、 あじさいの側を離れていった。 六月の中旬、 大きなあじさいの花が 悲しみいっぱいに咲いた。