「ねーねー皐月くん今日はどこ行くの?」

「ん?内緒」


待ちに待った放課後デート。
私たちは朝と同じように肩を並べて繁華街を歩いた。
皐月くんはやっぱり車道側を歩いてくれていて、思わず顔がほころぶ。


「あ!」


とあるゲームセンターのUFOキャッチャーが目にとまって、私は思わず足を止めた。
そのUFOキャッチャーの中には、私の大好きなキャラクターのキーホルダーが山積みになっている。
マシンのガラスケースに張り付くようにして中を覗いていたら、皐月くんも私の後ろから中を覗き込んだ。


「かわいいー!」

「なにこれ」

「ムール貝男爵だよ知らないの!?」

「知らないな」

「うわあかわいいなあかわいいなあ」

「お前これ欲しいの?」


うん、と私が頷くより早く、皐月くんはUFOキャッチャーに小銭を入れた。
皐月くんは特に迷う様子もなくスムーズにマシンを動かす。
皐月くんが動かしたマシンのアームは、キャラクターの足を上手く引っ掛け、そのまま景品取り出し口に向かって転がした。
一発でキーホルダーが取れてしまったことに驚いていると、皐月くんはキーホルダーを取り出しながらニコッと笑った。


「なんか取れちゃった」


はい、と私にキーホルダーを手渡しながら、さぞかし私が嬉しそうな顔をしていたのか、皐月くんは面白そうに微笑んで私を見ていた。


「皐月くんすごい!!UFOキャッチャー得意なの!?」

「いや全然。ほぼ初めてやった。ビギナーズラックってやつだな」

「それでもすごいよ!!嬉しい!ありがとう!これ一生大事にする!」


そう言ってキーホルダーを抱き締めたら、皐月くんの顔がゆっくり耳元に近付いてきた。


「俺のことも一生大事にしてよ」


そんなこと、いきなり耳元で囁かれたら、思わず心臓がドクンと飛び跳ねる。


「え……と……皐月くん……?」

「だめ?」

「いや、ぜっ、全然だめじゃない!!全然!!全然一生大事に、す、る!!!」

「ほんと?良かった。なら……」


「約束、な」 そう言った皐月くんの声はすごく優しかったけど、目は全然笑っていなかったことに、その時私は気がつかなかった。