「ん……」
背中に感じたひやりとした感覚で目が覚めた。
どれくらい眠っていたんだろう。
薄く目を開けると、灰色の天井が見えた。
大きな窓から、ぼんやりと月明かりが差し込んでいる。
体が重くて、顔だけを動かして横を見たら、硬いマットが視界に入って、徐々に先ほどの記憶が蘇ってきた。
「目、覚めた?」
反対に首を動かすと、目の前には優しい顔をした皐月くんの顔があった。
「震えてる。冷えちゃったかな、ごめん」
皐月くんは私の体を抱き寄せると、ぎゅっと抱き締める。
皐月くんの体も冷えていて、あまり温かくなかった。
「皐月くん……今何時……?」
「多分3時くらいかな」
皐月くんはそう答えると、眉を下げて小さく微笑んだ。
「……ああ、大丈夫だよ。お前の親にはちゃんと俺の家に泊まらせるって連絡入れといたし、明日は朝練ないからこの部室も誰も来ない」
「……」
「まだ夜中だから水道止められてるんだけど、朝になればシャワー室も使えるようになるから、そしたらシャワー浴びよう。タオルもドライヤーも俺のあるし」
「……」
「それとも腹減ったの?なら今俺コンビニで何か買って……」
「皐月くん」
言葉を遮ると、皐月くんはキョトンと首を傾げて口を閉じた。
「私、別れたい」
