納得して手をぽん、と叩いたら、皐月くんはやれやれと首を振った。
「ご、ごめんね……忘れてたわけじゃないんだけど……!」
「いいよ気にすんなって。俺から告白したんだし、俺が勝手に祝いたいだけだからさ」
皐月くんは記念日をすごく大切にしてくれる。
付き合いたての頃なんかは、1週間ごとにお祝いをしてくれて、さすがに毎週お祝いするのは大変だから、どうにか説得して1カ月に1回にしてもらった。
だけど未だに「今日で付き合って◯週間経ったな」なんて言ってくれるから、私より記念日をしっかり覚えているみたい。
「なあ、今日放課後何かある?」
不意に顔を覗き込まれて目が合うと、思わず顔が赤くなる。
「え、べ、別に何も、ないよ!」
「ほんと?」
私の返答を聞いた皐月くんは、嬉しそうに顔を緩ませた。
「じゃあさ、放課後デートしよ」
私がこくんと頷いたのを確認すると、皐月くんは更に目を細めて笑った。
形の良い唇から、ちらっとのぞく八重歯が可愛い。
「やった!じゃあ放課後迎えに行くから、教室で待ってろよ!」
「うん!」
皐月と歩く通学路はあっという間で、気付けばもう校門をくぐっていた。
皐月くんは私の頭をくしゃっと撫でると、「じゃ、放課後な」と綺麗に微笑んで、自分の教室の方へ歩いて行く。
そんな彼の後ろ姿を眺めながら、「幸せだな」って小さく呟いた。
