「ねぇ」
皐月くんがゆっくりと近付いてくる。
「お前は誰の彼女?」
優しく微笑んでいるようで、けれど目の奥は全く笑っていない。
「俺は、お前が好きだよ」
距離が縮まるにつれて、呼吸が乱れ始める。
心臓は壊れそうなほど激しく脈打っているのに、体は冷水をかぶったように動かない。
「お前も、俺が好きだよな?」
頷けばいいんだと思う。
何も言わずに頷けば、きっと私たちは今まで通りに戻れる。
でも……。
「……私も、皐月くんが好きだよ」
でも……。
「でも、今の皐月くんは好きじゃない。誰かを傷付けて笑ってる人と、私は一緒にいたくない」
