「……いい加減にしやがれよ?七彩…」
 
「んー?なぁに?」
 
「なぁに?、じゃねぇよ。なんだこのプリントは!勝手に人の名前の下に人の名字使って名前書いてんな!」
 
「えー…。だって"相川陸"って格好いいし?」
 
「どこまでいってもばかだなお前、相手になんねぇ…」
 
「でも、相手にしてくれてるよ〜?えへへ…好き」
 
 
また、惜しげもなくこいつは「好き」だと言う。
あんなに寂しげに呟いてた奴が、こんなふうに笑って。
それが、どうしようもなく歯痒くて。
 
 
「ばーか。ふざけんな」
 

そう言って、自分のノートに視線を移した。
こいつと話すようになってから、何度言っただろうか。
「ばか」という言葉。
それを口にする度に、心は全く違う想いを生み出す。
そして、オレに「ばか」だと言われればいわれるほど、こいつは本当にばかな顔をしてにへらと笑う。
「大好きだよ」と言って。
 
 
もっともっとオレだけ見つめればいい。
もっと、オレだけに狂えばいい。
 
オレ以外じゃ、ダメなくらいに。 
 
 
けして、口にはしないけれど。
七彩が呼び出しを受けるほど。
オレが告白を受けるほど。
 
 
俺の中で、そんな気持ちが、膨れていく。
 
 
 
ばかなのはオレの方か…。
でも、そんなのは百も承知だ。
 
 
だって、…この気持ちはあの日から少しも揺るがない。
逆に熱を増して焼き切れそうだ。
 
 
「七彩」
 
「んー…?」
 
「ばーか」
 
「??なんで?」
 
「さぁな」
 
「もー…」
 
 
 
こいつが、オレの隣にいる間は…。
もう少しこのままでもいいかと、そう思った。