「あ、侑悟、だめだよぉ。そんなデッカい溜息吐いたら、幸せ逃げちゃうよ〜?」 
 
「うるせぇよ。黙っとけ」
 
「うー…」
 

 
大人しく黙り込んだ七彩を横目に、オレはなんでこいつが好きなのかと、自問自答…。
 

出逢いは、入学式まで遡る。
女共にキャーキャー囲まれることに辟易したオレは、一人校舎裏まで来ていた。
そこには既に先客がいて、オレは舌打ちをして踵を返そうとした。
 
 
けれど。
 
 
「ごめんねぇ?あたし、そんなあなたの理想に近付ける子じゃないんだぁ…」
 

ふわふわしてるけど、どこかキッパリとした口調で告白を断ってる女がいる。
たったそれだけのことだったのに。
男が立ち去った後の、そいつの独り言が今でも耳について離れない…。
 
 
「あたしはあたしなのになぁ。…なんでみんな気付いてくれないのかな…はぁ…」
 
 
 
それだけで惚れたかと言われたら答えは「NO」だ。ただ、「こいつの気持ちは分かる」と思ったのは事実で。
それから俺の中で、七彩はなんとなく気になる存在になった…。
でも、一年でも二年でも、同じクラスにはなれなかったから、自分でも忘れていたんだ。
三年で同じクラスになるまでは。