「…で?言いたいことはそれだけか?」
 
 
 
珍しく向こうの言葉が途切れるのを待って。
オレは、一瞬の間を置いた後、そう切り出した。

 
場所は、体育館裏。
まさしく、ベタな告白スポット。
 
 
そして、オレはその場で…名前も知らない女に告られていた。
 
「…ッ」
 
「憧れてた、か…。んな中途半端な感情で、オレのこと好きとか言ってんじゃねぇよ。…おとといきな」
 

吐き捨てるようにそう言って、背中を向ける。
後ろでその女の泣き声が聞こえるが、もう関係なかった。
 
 
大体。
目の前にいるオレに向かって「憧れてた」だ?
んなもん、はっきり言って最低な褒め言葉だよ。
それに気付けねぇ奴らにゃ、興味も湧かねぇ。
 
 
オレは、オレだ。

 
 
勝手な理想を作って、夢なんざ見てんじゃねぇよ。
憧れなんかに囚われず、オレはどこまでも自由なオレでしかない。
 
 
だから。

 
「オレ」に惚れる女には、憧れなんかいらない。