『ちょっと待ってろ。』
そう幸治さんに言われ、その場に座る。
誰だろ。
少しして入って来たのは、
『やあ、かなちゃん。体調はどう?』
う……、これは幸治さんの仕業だ。
「だ、大丈夫です。」
私が言うこと聞かないからって、お父さんに言うなんて。
『大丈夫な訳ないだろ?
そこから立てないからそのままなんだろ?』
はい、そうです……。
『はい、無理しないで。』
そう言われたかと思うと、今度はお父さんに抱きかかえられ、ソファに戻される。
『いつから熱はあるの?』
チラッと幸治さんを見る。
『ちゃんと自分で言え!』
こ、幸治さん、かなりお怒り……。
「えっと、昨日の夕方からです。」
『他に症状は?』
「咳が多少出たことと、頭痛が少しと、胃が少し痛いです。」
『はは、かなちゃんは大袈裟にならないようによく「少し」って付けてるね』
と大笑いするお父さん。
そんなつもりは全くないんだけどな。
笑われると恥ずかしい…。
『じゃあいつものように聴診するからね。』
「はい…お願いします。」
お父さんの言う通りに深呼吸をしていると、次第に眠くなって来た。
ウトウトし始めたころ、
「痛っ!」
軽い痛みで目を覚ます。
お父さんがお腹を押している。
『この辺かな?』
う…痛い。
「はい。」
『戻した?』
「はい、朝ごはんを食べ過ぎて。」
『ここは少し様子見だね。
それと頭痛があってから薬は飲んだ?』
「いえ……。」
『昨日の夜は俺が玄関で寝てたところを部屋に運んだし。朝は飲んでる感じだったけど、昼はまだだよな?』
と幸治さんにすかさず答えられる。
「そ、そのとおりです……。」
とオドオドしながら答える。
『かなちゃん、薬はちゃんと飲まなくちゃ。どうしても飲めなかったら、起きてから飲んだらいいから。
今のかなちゃんには充分な食事と、薬をちゃんと飲むこと。
その上で疲れたり体調が良くなかったら吸入すること。これだけで発作も出なくなるし、体はもっと楽になると思うよ。
喘息の発作は心臓に良くないから、喘息の発作が出ないようにすることが一番大事。
分かったかな?』
「は、はい……。」
もう一度チラッと幸治さんを見る。
『だから言っただろ?
進藤先生の代わりの先生も、それを言ってたんだ。
でも、今までお前が言うこと聞かず、薬捨てたり、検診行かなかったり、吸入までもしなかったから進藤先生が医局まできてわざわざ言ってくれてたんだぞ。』
口早な幸治さん……。そのとおりです……。
『かなちゃん、それは自殺行為だね。寿命を縮めるよ。』
う……。寿命を、縮める……。
いつも何度も怒られている幸治さんの言葉よりも、お父さんの言葉に私は頭の中が一瞬真っ白になった。
それからは何も答えることができなかった。
お父さんの長い診察の後は、部屋で寝たいと無理を言って、薬を飲んだ後、一人部屋に向かった。



