私は次の日から、高校の同級生の有美(ゆみ)とグアムへ向かった。
 待ちに待ったグアムに胸が弾んでいた。


 昨日はあれほど落ち込んでいたのに、自分の切り替えの早さに驚く。
 夕べ泣か無かったからかもしれない…


「ねえ、夏樹。例の彼氏とはどうなっているのよ?」

 山下課長の事は有美だけには話してあった。


「うん。もうダメ……」
  私はグアムへ向かう機内から窓の外を見た。


「そっか。さあ、グアムに着いたら思いっきり遊ぶぞ!」
 有美は両手を上に伸ばした。

 それから、有美は山下課長の事は口にしなかった。

 日本に帰ったらちゃんと話そう……



 グアムは本当に楽しかった。
 スキューバーダイビングもしたいし、美味しい物もいっぱい食べた。


 DFSでお土産を選びながら、ふと彼の事が浮かんだ。
 それは、目の前に飾ってあったTシャツを見たからだ。
 グアムのとかげゲッコーが、ぶかぶかのスーツを着たイラストのTシャツ。
 なんとなく彼に似ていて、常夏の島でスーツっていうのも笑えた。


 鍋ご馳走になってこのままっていうのもなぁ… 
 美也さんにもお土産買って行きたいし…… 
 Tシャツを手にしたが、まさかこれ買っていくのもなぁと思い、横に置いてあったハンカチに決めた。


 楽しい事はあっと言う間に終わってしまう。

 私は砂浜に座り、青い綺麗な海がオレンジ色に染まっていく姿をみながら、ある事を考えていた。


「ねえ、有美……」

「何?」

「私昔から言っているけどさ、海外で暮らしてみたいんだよね。今回の旅行で真剣に思ったわ」

「いいんじゃない? 私達まだ二十三だよ。やりたい事やってもいいんじゃない?」
 
「うん。やって見なきゃ分からないよね。日本に帰ったらちゃんと調べてみるわ」


 私は前に進む決意をした。


 有美が優しい笑顔を向けたくれた。