二次会は、時々会社が利用するスナックで、ほぼうちの会社の貸切り状態で賑わっていた。

 大分盛り上がって、ちらほらと帰る人も出始めた。


 私は山下課長の方を見ると目が合った。

 これが、私達の合図だ……


 私は皆に挨拶をして、財布から二次会の会費を出し、スナックを後にした。

 多分、十五分もすれば、課長も出てくる。


 私はいつも待つビルの影へと向かった。

 しかし、三十分待っても課長は現れない。寒さに体が震える。
 思わず身を縮めた。

 一時間程待っただろうか? 山下課長の姿が現れ、私は思わず走り寄った。

 山下課長は私の肩を抱き、軽くキスをするとタクシーに手を上げ乗り込んだ。

 行先は、私のアパートだ。



 またしても、ビルの反対側の酔っ払いの団体の中に、彼の姿があったなど私は思ってもいなかった……

 ましてや、彼が酷く苦しんでいたことなど……
 
 私は何も知らなかった……



 
 部屋に入るなり課長は私を抱き寄せると、唇を重ねながらベットへとなだれ込んだ。

 課長の手は、私の体を撫でながら瞬くまに服を脱がしていった……

 私は課長を感じながら、何かいいようのない違和感を覚えた。
 
 この、冷めた感じはなんだろう?


 いつもならもっと……

 
 課長は、ベットの上で半分起きあがり、タバコを一本吸い終わると私に背を向け支度を始めた。

 まるで片付け仕事でも終わったかのように…


「もう帰るの?」


「ああ」


「今度、いつ…」

 これは、私が言ってはいけない言葉だと思い飲み込んでしまった。


 課長は、私の頭をクシャっと撫で玄関へと向かった。


 ドアの閉まる音が響き、私はもう課長はここへは来ない気がした。


 起き上がった私の目から、ベットのシーツの上に涙がぽたりと落ちた……

 
 さっきまでの浮かれていた私はどこかへと消えた……