「行けばいんだろ」



それだけ言って琉磨くんはあたしがさっき来た道を戻ろうとする。



「琉磨くん」


「は?」


「ありがとう」


「別にお前のためじゃねーし」



そういう横顔はどこか赤くて。
照れているってことがわかる。



あたしの為なんかじゃなくていい。
でも近くに琉磨くんがいる。
それだけで嬉しいんだ。


大学に入ってから
今が一番近いのかもしない。

あぁもっと早く
話しかければよかった。


いつも不機嫌そうな琉磨くんに
いつしか話しかけるのが怖くなっちゃって。
そのまま話しかけるのをやめちゃったんだよね。

好きなまま。



「好き…」



聞こえにないような声でつぶやく。



「は?」



怪訝な顔して振り向く。