それから結城くんと私はお互いの事を話し合った。結城くんは高校二年生で、私は高校一年生だと言うこと。結城くんと一緒に来ていた友達は部活仲間だって事も教えてもらった。
そして、結城くんの許可で私は敬語からタメ口に変わった。
その後は一緒にプールで遊んだり、かき氷を食べたり。寂しい気持ちやつまらなかった気持ちが一気に吹き飛び、最高の時間だった。
「ありがとう!結城くん」
閉園間近、腰まで浸かるプールで遊んでいる時にそう言った。彼は何に対してのお礼か分かっていないらしく首をかしげる。
そんな彼に、私はふふふと意地悪く笑ってプールの水を沢山かけた。
「ちょっ、やりやがったな!」
彼の言葉はきつくても、声からは楽しげな雰囲気が漂う。笑いながら私に負けじと水をかけてくる。しかもそれが近づきながらやるもんだから、たまったもんじゃない。
「あははっ、ちょっと結城くん待って!わっ」
彼から逃れるように後ずさっていると、お尻に壁がぶつかった。
行き止まりか…。
しかし、彼は水しぶきをあげているせいで私が立ち止まったのが見えていない。彼はお構い無しで私に水をかけながらどんどん近づいてくる。水をかけられている手前、私も防御で手一杯。
遂に、彼の体と私の体はぶつかった。
「うわっ!?」
「!」
覚悟はしていたので、私はそこまで驚かない。しかし、彼は心底驚いた様子だった。そのお陰で動作が完全停止している。
けど、私も…。この体勢はちょっとまずい。
私はプールサイドに両肘をついて仰け反った状態。そして、彼の両手もプールサイドについて、顔が私の間近に来ている。私の足の間には彼の右足が絡まる。
頬がみるみるうちに熱くなるが、それなりに私は大丈夫。むしろ結城くんの方が心配だ。
私はイケメンさんとこんなラブハプニングがあって満更でもないが、相手の気持ちを考えると素直に喜べないので顔には出さない。
「あの…結城くん?
そろそろ退いてもらっても…」
未だに動作が完全停止している結城くん。
…うん。だよね。こんな私とこんなハプニングがあったら、さすがに嫌だよね。完全停止したくなる気持ちもわかる。悲観ではなく、ただこうなってしまった結城くんを同情した。すまん、結城くん。今退きます。
「ごめん…結城くん」
そう言って彼の前から退こうとすると、彼は思いがけない行動に出た。
「えっ、結城くん!?」
退こうと私が体を横にずらした時、彼がプールに肩まで浸かり、沈み出したのだ。彼の吐く酸素で水面が泡立っている。
「ちょ、ちょっと!結城くん!?どうしたの!?」
全くもって状況が理解出来ない。彼は一体どうしたのか。あたふたしながら彼を見ていると、ゆっくり浮上して来た。目が見えて、私は心配そうな表情で覗き込む。
「どうかしたの…?」
彼は顔だけを水面から出して、顔を歪めた。そしておもむろに口を開く。
「膝…強打した」
「えぇええ!?」
水面から見える彼の身体を見てみると、右膝を抱えているようだった。