二人とも食べ物を持ってどこで食べるかが問題になったが、俺の荷物置き場の方は日に当たって暑そうだったので、日陰になっている彼女の荷物置き場へ向かう事になった。
「皆、今頃楽しんでますかね?」
胸の高鳴りも収まって、俺は平常心を取り戻しつつあった。
「そうだな。アイツら、粗相なことして無きゃいいけど」
野郎が嫌がる彼女達に手を出すシーンが容易に想像出来て、俺は顔をしかめる。
「あははっ、大丈夫だと思いますけどねぇ」
…うん。特に何ともない。さっきは紺野さんの笑顔を見ると胸が高鳴ったが、今はどうともない。先程のことはきっと気のせいだったのだろう。俺は彼女の笑顔を見ながらそう思う事にした。
「あ、ここです。すみません、ちょっと散らかってて…今片付けますね」
「いや、そんなん別に良いよ」
そうは言っても、彼女はレジャーシートの上を片付けていく。
しっかりした子だな。
俺はせっせと動く彼女を見て思った。何だか和む。と、思った矢先の事。
「わっ…!?」
彼女はレジャーシートの端に置かれていた黄色いカバンに躓いた。
「ちょっ!?」
スローモーションに前のめりで倒れて行く彼女。間に合え!と、必死に心の中で叫んだ。
「うっ」
彼女のうめき声が上がる。俺の左手にはその彼女が抱えられていた。倒れる衝撃を覚悟していたのか、固く目を瞑っている。
「ギリギリセーフ…って、所かな」
俺も一息ついて言葉を落とす。俺の声に彼女はゆっくり目を開けた。
どくん。
あれ、やばい。またあの感覚。
「あ、ありがとうございます…。結城くん」
心底ホッとした表情でお礼を言った後、現在の体勢を理解したのか、彼女の顔がボンッと顔が赤くなる。
「わぁぁあ!ごめんなさい!」
急いで自分で立ち直って、俺に何度もお辞儀する。
「ごめんなさい!ごめんなさい!重かったですよね!怪我とかありませんか!?」