何やってんだ、俺。彼女を助けようとしたはずなのに、逆に彼女を傷つけて…。
如何にしてフォローするかを考えていたら、彼女は俺の横を通り過ぎて行った。
「じゃあ、私は荷物置き場に戻りますね」
「えっ、あ…」
彼女を追いかけるように振り返ると、彼女はもういつもの調子に戻っていて、どんどん背中が遠のいていく。
俺は彼女の背中に手を伸ばすが、引き止める勇気もなく、諦めて踵を返そうとした。しかし、
「あ、そうだ」
彼女の明るい声に、俺は体の向きをまた戻す。
「さっきはありがとうございます。
男の人、断るつもりだったんですけど…結城くんが入ってくれなかったら押し流されてたかも。
その後に罰ゲームとか知らされたら、もう絶望だったかもしれないので」
照れくさそうに笑った後、「それでは」と手を振ってまた遠のいて行く。彼女は凄い。逆に俺がフォローされたのだ。
彼女のサイドで括られた髪が歩く度に揺れている。俺は遠のいて行くその後ろ姿を見て…
「待って!」
無性に引き止めたくなった。
彼女はキョトンとした顔で振り返る。
「何ですか?」
彼女のその声で、我に返る。待て…、何で俺引き止めた?
彼女の足を止めた所で何か言うことを用意していたわけでもなく、俺は目を泳がせる。
「え、えっと…あの、さ」
ああぁー、もう!何で俺こんな事してんだ!?くっそ、キャラじゃねぇ…。
「?」
彼女は相変わらずキョトンとした顔をしている。
あーもう、ヤケクソだ!こうなったら。
「一緒に、昼ごはん…食べない?」
しどろもどろの問いかけだった。さすがに唐突過ぎて引かれたかもしれない。
彼女の顔を恐る恐る伺うように見てみると、目を輝かせて、嬉しそうに笑っていた。そして握った両手の拳を胸元で振る。
「うん!いいですね!食べましょう!
どこで食べますか?結城くんの荷物置き場の方へ行ったほうがいいですかね?
あっ、結城くんはまだお昼ご飯買ってませんよね、私そこで待っておくので買ってきて良いですよ!」
面白いほど饒舌で、彼女は近くの椅子に腰掛けて、俺を待つ体制に入った。