午前十一時を告げるアナウンスが場内に流れた。九時の頃よりは幾らか人が増えている気がする。


私は家から持ってきていた小さな水筒を飲み干して、場内をもう一度見渡した。


「あ、優香と大雅くん」


私の座っている荷物置き場の前はプールサイドを挟んで幼児プール。その先には流れるプールがあって、米粒ほどの大きさだけど、その二人が見えた。大雅くんが優香の手を引いて歩いている。


良いなぁ、楽しそう。優香は今まで男の人に誘われてたら全部断ってたけど、何で大雅くんは大丈夫なのかなぁ。


ボーッと頬杖をつきながら考えた。少し哀愁漂う。


恐らく、皆と別れてからは三十分ほど経っただろう。


良いなぁ良いなぁ。皆今頃、青春してるんだろうなぁ。


「ひとり…寂しい」


そう呟いてため息を落とすけど、皆に許可を出したのは私。後悔しても後の祭りだ。


足を抱えて頭を垂れると、ついさっきまで体を動かしていたこともあり、盛大にお腹が鳴った。と言っても周りは喧騒なので私にしか聞こえていない。


私はすぐ近くにあるお店に目を向けた。まだ人は少ないが、これから時間が進むにつれて人が増えるだろう。


仕方ない。お腹も空いたし、暇だし。ちょっと早めのお昼にしよう。


私は黄色い自分のプールカバンから財布を取り出した。


風がそれなりに吹いているため、先程からレジャーシートの端がめくれ上がっている。今までは私が座っていた所で食い止められていたけど、私も離れてしまうため皆の荷物が心配になった。


レジャーシートが極限までめくれ上がって皆の荷物がひっくり返っちゃうのヤだし…。


考えた結果私の荷物でレジャーシートを留めておく事にした。