「大丈夫、だよ」
せめて笑みでも返せれば良かっただろうか。
でも、本当に歌えるのか不安でそれどころではなかった。
それはきっと、みんなも勘づいていたはずだ。
私が音楽の授業に参加していないことは、このクラスの誰もが知っている。
本当に私が歌えるのか。
今から合わせて間に合うのか。
そんな不安が脳裏をよぎる。
でも、引き受けてしまったからには。
そんな弱音なんて吐いていられない。
全身が、震える。
心臓が、叫んでいる。
それでも私は、歌う。
私の全身全霊を、音にのせる。
ステージに立った今、胸にこみ上げる感情は緊張しかない。
体だけは心と裏腹に、歌いたい、と叫んでいるように開放的な気分だ。
スポットライトが当たり、マイクを持った私に視線が集まる。
思い切り、深呼吸をして。
歌うんだ。
あの高い空まで届くように。



