「……もう、わかったわよ」
痺れを切らしたのか、頭だった女子が背を向けた。
心配、興味。
そんな気持ちで群がっていた人達が、そのひと言で自分の持ち場へ戻っていく。
「音中さん、本当に……ありが、と……」
「お礼はいいです。
それよりも、今は休んでいて」
起き上がって私に向かって歩き出そうとした彼女を慌てて止めた。
ここで動いたら、私が名乗り出た意味がないじゃない。
途切れ途切れで聞き取りづらい言葉から、相川さんの真面目さが伝わってくる。
あまり話したことはなかったけれど、悪い人ではなさそうだ。
「陽葵ちゃん、大丈夫?」
「無理して歌わなくても良かったのに……俺が止められなくて悪い」
日々ちゃんと錦戸くんは、心配して駆け寄って来てくれた。
私はふたりに迷惑や心配をかけてばかりだ。
いや、ふたりだけではない。
相川さんが抜けたことにより、他のバンドのメンバーへの不安も大きいだろう。



