あぁ、もう。
この世の中はなんて理不尽なんだろう。
私が1歩踏み出して新しい世界を覗こうとした、そのときに。
また新しい試練に挑戦させるなんて。
困難を乗り越えて強くなる─────。
よく言われるけれど、それが一概に全てに当てはまるとは限らない。
────『お前は歌い続ける限り、自分の過ちに縛られるんだ』
あの低く威圧的な声が、また頭の中で繰り返される。
もう何年も前に言われた彼の言葉は、どんなに年月が経っても頭から離れない。
その脅し文句にも聞こえる脅迫と威圧に、私は今日も負けてしまう。
もう歌わない。
音楽なんていらない。
あの日、そう誓った。
だからそれを守り続けてきた。
私のせいで、もう誰も傷つかないように。
私が歌うことで不幸になる人がいるのなら。
もうそんな自己満足はやめる、と。



