「そんな彼女のことを、あなた達は笑えますか?
彼女の努力を知っているんですか?」
私の言葉に、相川さんを貶したふたりは言葉を失ったようだった。
彼女は、誰にも応援されなくても、誰に見下されても、練習を投げ出したことは1度もなかった。
心が折れたって仕方がないようなことをされても、平気なフリをして笑っていた。
その度に、私が。
許せない、もうこんなことはさせない、と思っていたのは事実だ。
だからって、自分で考えるよりも先に行動するのは少し問題だ。
いつだって冷静に。
それが私のはずなのに。
もう大丈夫かと思い、相川さんのもとへ駆け寄ると。
「じゃあ、音中さんが代わりに歌えるの?」
────聞いてはいけない言葉が、聞こえた。
「そうだよ。
偉そうなこと言ったんだから、それくらいできるよね?」
さっきのふたりが、また威圧的な目で見ている。
きっと、私が音楽の授業に出ていないことを知った上で言っているんだろう。
私の弱味が音楽だと、わかった上で。



