どうして口に出してしまったんだろう。
私ったら、なんて無謀なの?
せっかく穏やかな毎日を送れていたというのに。
それを自分から壊すようなことをするなんて。
「音中さん、どうしたの?」
「もしかして、いい子ぶって相川さんのこと庇うの?」
相川さんに悪口を言っていた女子ふたりの言葉が、今度は私に向けられる。
正面からそんなことを言われたり、自分の行動を否定されたりしたのは初めてだから少し体が強ばる。
彼女達と向かい合うだけでも心臓に何かが刺さったように痛い。
女子って、こんなに怖い世界で生きているんだ。
と改めて思った。
いい子ぶる?
庇う?
違う。
そういうつもりじゃない。
ただ、こんな仕打ちは許せないだけ。
「私は、相川さんが毎日遅くまで残って練習していたことを知っています」
ダメだってわかっているのに、口の動きが止まらない。
こんなことに巻き込まれたくない気持ちは確かにあるはずなのに、体がそれを拒否しているようだ。



