ラフなTシャツにパーカーを羽織り、下はジーンズを履いている。
そんな無難な格好ではある。
けれど、もともとの顔立ちと凛とした立ち方には、かっこよさを覚えてしまう。
そんなこと本当は思いたくないけれど、事実だから仕方がない。
声をかける人こそはいないものの、遠巻きに見ている人は何人もいる。
あの中に、私が入って行くの……?
そんなことをしたら、影で何を言われるかわからない。
いっそのこと、ここまで来たことはなかったことにして帰ってしまおうか。
そう思っていたときだった。
「音中さん?」
私を見つけたらしい会長が、こっちへ向かって歩いてくる。
……あぁ、終わった。
回りからの視線がとても痛い。
きっと彼は気づいていないと思うけれど、そんなの罪だ。
……いや、それとも彼のことだから、こんな風に鋭い視線が私に向くことまで想定済み?
ダメだ。
やっぱり彼のことは、信じられない。



