「なぁ、どうして音中さんは音楽の授業だけ出ないんだよ?」



その言葉が、私を心配して言ってくれているのは伝わってくる。



どうして彼らはこんなに優しいんだろう。
裏切り者の私には居場所なんてないのに。




みんなに迷惑をかけたいわけでも、構ってほしいわけでもない。



むしろ、こうして迎えに来てくれているのに応えられないことが申し訳ない。



それでも。




「音痴だから、音楽は嫌いなんだよね。
だからサボっているの」



これだけは、この秘密だけは。
打ち明けるわけにいかない。



ふたりは誰にも言いふらしたりしない。
そんなことはわかっている。




でも、これ以上問い詰められると、ボロが出てしまいそうで。



この嘘に気づかれないよう、なるべく自然に笑顔でそう返した。