そんな願いも虚しく。
「やっぱり教室にいたか」
「陽葵ちゃん、一緒に行こ?」
騒がしい声と大人しい声が、教室のドアを開けた。
次の授業は、音楽。
だから私は『出ない』って言ったのに。
このふたりは、それでも私を誘おうとここまで戻ってきたらしい。
「私は、行かないよ」
何か聞かれる前に、ひとりでに答えた。
私が彼らに何も話していないのが悪い。
でもそんな勇気はない。
だから、隠し続けるしかないの。
後ろめたい気持ちはもちろんあるけれど、仕方がないことだ。
音楽の授業なんて受けたくない。
音楽なんてもう聴きたくない。
あんなことをしてしまった私に、音楽と関わることは許されない。