「────陽葵っ!」




太くて優しい、大好きな声。



何年も何年も待ち望んでいた、あたたかい声。




冷たく無愛想だったときとは大違いなほどの甘い声が鼓膜を揺らす。




「ただいま、陽葵」



「おかえり、先輩」




軽やかな風が吹いて。
また、春がやってきた。



10年ぶりの再会に思わず涙が溢れる。




先輩は約束通り、迎えに来てくれた。



私は約束通り、彼に追いつくことができた。



だからここからは、ふたり並んで一緒に歩こう。