「……ありがとな。
お前のおかげで俺はまたピアノを弾ける」



その言葉が聞けただけで、私は満足です。




天音先輩からの「好き」って言葉を聞きたい。



そんな無謀な思いよりも、「ありがとう」「お前のおかげだ」って。
そんな言葉が聞きたかった。




天音先輩の役に立てたのなら。



お姉ちゃんの死によってできた傷を癒すことができたのなら。



これが私の、最高の歌だ。




「………好き、です」



聞こえないくらいの声で呟いた。



彼の耳に届いていたかどうかはわからない。



けれど、確かに彼がフッと笑った気がした。