「俺のこと、嫌いだろ」
そう、静かに発された。
その瞬間、近くの桜の木から風にのって花びらが舞う。
「え……?」
驚いた。
まさか、気づかれているなんて思わなかったから。
そんなに顔に出ていたのかな。
どうしよう。
私ってば、失礼なことをしてしまった気がする。
「表情とかじゃなくて、なんとなくわかるんだよね。
……例えば、その人の目とかで」
と、私の考えを読んだように言葉を続ける。
例えそうだとしても、驚きを隠せない。
まず、自分のことを嫌っている相手に、率直に尋ねるところがすごい。
私だったら気づいても聞かずに、そのまま会話を終わらせるはずだ。



