その場で聞いている人達は、天音先輩の過去に何があったのかを知らない。



彼の素顔を見たことがない。



それなのに、告白する。




『だから俺も、仮面をつけて接している』



前にそう言っていたのは、きっとそれが理由なんだろう。



確証はないけれど、そう思った。





周りは騒がしい。



先輩に忘れられない人がいる、という突然のカミングアウトに驚きを隠せていないようだ。




「嘘っ、会長って好きな人いたの?」



「意外だよねー」



実際、私のそばにも感想を述べている人がふたりいる。