────ドクン。 一瞬、時間が止まったように感じて。 今までにないくらい心臓が高鳴った。 え、今の何? こんなに心臓が速いのはどうして? 「じゃあな、陽葵」 彼は手を振って、穏やかな表情で去っていった。 それなのに、さっきから心臓が妙に脈打って。 ドキドキが、止まらない。 今も続いている。 まさか……そんなの、ありえない。 一瞬浮かんだ考えを消し去って、平常心を保つ。 少し肌寒い屋上で、なぜだかツンと涙の味がした。