「理由は、何も……」
「じゃあどうして泣いているんだよ」
核心を突かれ、動きが止まる。
嘘でしょう?
自分が泣いていたことなんて、知らなかった。
「……合唱コンクールで、ソロを頼まれて。
もう歌わないって、決めたんです……でも、気持ちが揺れているんですっ……」
口の動きが止められない。
彼にだけは知られたくなかったのに。
言ってはいけなかったのに。
そんな気持ちとは反対に、体は正直なようだ。
「澄恋は、まっすぐだった」
ふいに、天音先輩は口を開く。
え?
いきなり始まったお姉ちゃんの話に、頭が追いつかない。



