「文化祭のとき、陽葵ちゃんの歌声に感動したの。
こんなに上手な人がいるんだ、って」
そう言って相川さんは顔を赤く染める。
いつの間にか彼女にまで「陽葵ちゃん」と言われていて驚く。
アイドルである彼女にそう言われるのは、喜ぶべきことなんだろう。
でも、私は。
「私は歌わない。
もう、歌いたくないの……!」
思わず感情的になって、伸ばされた手を振り払ってしまった。
ダメだ。
せっかくできた友達を、私が傷つけている。
「放っておいてほしい」
追い打ちをかけるように、ふたりにそう言い放つ。
もう後戻りはできない。



