なつめ。 俺はお前のことが― 唇まであと一センチ。 日野はめいっぱい俺を引き離して飛び出すように教室をでていった。 「...バカか、俺」 ひとりきりの特別教室で、ぽつりと呟く。 日野のことが、好き。 なんて一瞬頭の中によぎった。 だけど、そんなわけない。 俺が好きなのは今も昔もアイツだけ。 適当な女と付き合ってみても一度だってその思いをぬぐえたことはない。