里乃は一度も涙を見せなかった。 でも、絶対に辛かったはず。 私なんかよりもずっと。 だって、7年も付き合った相手で、 婚約の直前だったのだから。 私はただ、過去の失恋を引きずっているだけ。 あれから一度も恋なんてしていない。 もしかしたらずっと恋しているのかもしれない。 悠以上に好きな人なんて見つけられない。 指輪に一番近い仕事をしているのに、 私は指輪に一番遠いんだ。