「凄い雨……」

 馬車の小窓から、ソニアはそっと外を眺めた。
 
 城から出発したときは雲一つない爽やかな天気で、太陽も温かな光をあちこちに恵んでいたのに――
 
 叩き付けるように降る雨に、ソニアは恨みがましく睨み付ける。
 
 そうしたところで回復するわけではないが、嫌がらせのように更に雨足の強くなったのには腹立たしい。
 
 雨が馬車内に降り込んできそうな勢いにまでなって、ソニアは慌てて窓を閉めた。

「これは……。今夜は、どこかで宿をお借りした方が良さそうですな」
 
 クリスが対面に座るソニアに意見し、ソニアも同意する。
 
 王都までのこの道に、隣接されて建てられた宿泊街まではあと少し。
 
 予定はその宿泊街を抜けて、もっと先の拓けた野原でテントを張るつもりでいた。
 
 修道院からクレア城に戻る際には、デュマ侯爵の別宅をお借りしたが、自分と自分の周囲に起きている不可思議な出来事を考慮すれば、また泊まることなど出来ない。

 王都に出向く準備が着々と進んでいくなか、クリス周辺に起きる怪奇現象を見てソニアは不安が増す一方だった。