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「こちらの礼拝堂は、閉鎖して長年使われていないとマチューからお聞きしました」
 
 クリスの手が、古びて塗装が接げている扉につく。 
 
 城の最南の位置に造られた礼拝堂。
 
 一階にあるそこは、設置場所としては最良の位置だ。
 
 それなのに大きな閂を掛けて、入るものを一切拒絶させている。

「確か……『庭に別に新しく礼拝堂を建てるから閉鎖をするのよ』と母が話してくれた記憶があります。私が物心ついた頃からずっと閉鎖をしていますから、気にしていませんでした」
 
 確かに庭の片隅に、可愛らしく造られた白い壁の礼拝堂がある。
 
 ソニアはこの城に住んでいた頃は、祈りはいつもそこで行っていた。

「姫君のお祖父様がここを閉鎖したそうですよ。この城に勤めていた司祭が亡くなった折に」

「何故でしょう?」
 
 ソニアは首を傾げる。