「姫、それは違いますよ」

「でも……」
 
 今にも頬に伝いそうに溢れている瞳で自分を見つめるソニアを見て、クリスは微笑みを作る。

「我々の神は『罰』を与えません。人はこの世に何かしら役割を授かり生を与えられます。ソニア様は一生懸命クレア家の存続のために動いてらっしゃる。……一人になって辛い活動かも知れませんが、それでも貴女は頑張って務めを果たそうとしてらっしゃる。そんな姿を見て神が自分から離れたからと罰を与えるなんて、とても思えません」

「私、私は……」

「神の加護魔法を修得している私が言うのですぞ? 神の罰なら貴女の旦那になる私の魔法が、まず先に無くなると思いますが?」
 
 茶目っ気に片目を瞑ってみせたクリスに便乗して

「そうですよ! ソニア様には神の加護を持つクリス様がいらっしゃいます! 決して神様の下した罰ではございません!」
と侍女頭が力んだ様子で話す。
 
 他の侍女達も
「そうですよ! こんな悪どい悪戯をした奴を見付けて、とっちめてやりましょう!」

「自然現象かも知れませんよ? 調査してもらいましょうよ!」

 と力強くソニアにもの申す。

 
 一気に空気が変わった――明るく元気な雰囲気に。