◇◇◇◇

 玄関まで出迎えたソニアは、クリスから籠を受け取って目を丸くした。
 
 野に咲く花の青く瑞々しい香り。そして甘酸っぱい木苺の匂い。

「摘みたての香りがします」
「味見をしてみますか?」
 
 クリスが籠から木苺を一つ摘まんで、ソニアに見せる。
 
 粒が大きくて艶やかに赤く熟れていて、いかにも美味しそうだ。

「美味しそう!」
 
我を忘れて、クリスが摘まんでいる木苺にパクついてしまった。
 
 やってしまって、ハッと口に手をあてながらモグモグしているソニアに、目を見開き唖然としているクリス。
 
 そして
「ソニア様、大人気ございません」
とたしなめる侍女頭。

「ご、ごめんなさい……」
 
 熟れた木苺のように赤くなるソニアにクリスも、照れ隠しに
「いや……、その、静電気が起きなくて良かった」
と一つ咳払いをした。