◇◇◇◇
 
 春の穏やかな日差しは、等しくクレアの土地にも到来している。
 
 城から離れれば、葉は若々しく柔らかな緑の色を出して朝露を吸い込み、生き生きと光を浴びている。
 
 早くも畑仕事を始めている民達は、訝しげることなく余所者のクリスにも帽子を取って頭を垂れる。
 
 ――馬の外被りにクレア家の紋章が縫われているから当たり前か。
 
 クリスは馬上で一人笑う。
 
 そんなクリスを見て、今度は民達は不思議そうに顔を見合わせた。

「――むっ」
 
 日差しを作る太陽の方角に殺気を感じ、クリスは顔を上げる。
 
 何か勢いよくこちらに向かってくる何かに、彼は目を眇めた。

「甘い!」
 
 クリスは腰から剣を抜くと、墜落する勢いで飛んできた拳大の石を馬上から打ち返した。
 
 それは、クリスの腕力が付加して物体が物体に力を及ぼす。
 
 先程よりも、より加速度が上がって宙を飛んでいった。

「グエェェ!」
 
 手で日差し避けをし飛んでいった方角を見据えていたら、飛んでいた鳥に当たり、人の叫びのような声を上げ下に落ちていった。