「それに、セヴランではソニアにかかっている『呪い』を打ち消すことは出来ん」

「教皇様の神のお告げが当たると良いのですが。で、なければあの方が『呪い』に負けてしまうようなことになれば、国としてかなりの損失になります」
 ソニアの結婚相手の身を心配しているのだろう。従臣は憂いの表情を見せた。
 
 パトリスは馬車の小さな窓を開けて、街並みを見つめる。
 
 彼の活躍でここ二十年は、国が戦火に巻き込まれることは無かった。
 この整然とされた街町並みと、笑顔溢れる民の生活は彼の国への忠誠心と類い希なる騎士の才能のお陰だ。

「彼にまた、大きな負担を掛けさせることは私も悪いと思っている……。しかし、教皇の予言もそうだが、私もソニアの呪いを解くことが出来るのは彼しかいないと思っているのだ」

 パトリスはそう話を閉めくくった。






◇◇◇◇
「まあ! 結婚が決まったの! おめでとう、ソニア! しかも、第二王子のセヴラン様とだなんて! 素晴らしいわ!」

「ありがとう、パメラ」
 
 ソニアは手放しに喜ぶ、同室の同い年の彼女に恥ずかしそうに礼を述べた。