次の日の朝、昨晩のうちに司祭に使いをやった者が一人で戻ってきた。

「そう……お忙しいの……」
 
 使者の言葉にソニアは悲しげに瞳を伏せた。

『依頼が立て込んでいて、そちらに向かえる目処がたたない』

 という返事をもらって返ってきたのだ。

「この周辺では、城で起きたような現象が多く起きているということかしら?」
「私どもの耳には入っておりませんが……。調べてみましょう」
 
 ソニアの問いかけに、側に控えていたマチューが答えた。
 
 そういえば、とソニアはこの二、三日存在感を出して側にいた、例の髭熊の騎士がいないことに首を傾げる。

「クリスフォード様は?」
「クリスフォード様でしたら、夜が明ける前に馬駆けにお出になられました。日が高くなる前にはお戻りになるそうです」
 
 侍女頭の返事に、ソニアは飲んでいた紅茶のカップを慌てて戻す。