ソニアは彼の顔の輪郭にそってびっしり生えている髭を涙目で睨み付ける。

(どうして髭が、髭だけがこんなに拒絶反応を示すのー!!)

髭を意識しただけで、もうソニアの身体中が鳥肌と変わる。

「姫君?」

「ご、ごめんなさい! もう大丈夫です! お休みなさい!」
 
いきなり睨まれてクリスも不思議に思ったのか、顔を近付けてきて辛抱堪らず部屋に逃げ出したソニアだった。
 
それでもクリスは苦笑いをするだけで、全く怒りを表わすこともしない。

「ではお休みなさい、姫君」

と挨拶をすると、折角空いたままの扉を閉めた。

まったく、大した騎士精神です。