「安心しましたか?」
 
頷くソニアの頭をまた撫でてやるクリスの顔は至極優しく、慈愛に溢れている。
 
守られている――そんな感覚が彼から伝わる。
 
それは、とても安心できてロザリオよりも頼りがいのあるものと思うのに何故、髭くらいで嫌悪の感情が湧くのだろう。
 
彼が近い将来自分の旦那様になるからなのか? 
 
初恋の相手があまりにも理想通りだったからだろうか?

(それでも……)
 
自分自身、理想の王子様が迎えに来て修道院から連れて行ってくれて、一途に自分を愛してくれてどんな時でも頼りがいあって……
なんてお伽噺を一から十まで揃ってる伴侶なんて、現れるはずがないと思っている。
 
そこは同年代の他の娘より現実を見ている。
だからクリスが婚約者だと分ったときはすんなり受け入れた自分がいて、挙式までに何とかこの『髭』を好きになろうと努力はしていた。
 
割り切られるのは、過去に両親を亡くした経験から来ているのだろうと、自己解析までしているソニアだ。